深山ミルクえん 樋口絵梨(ひぐちえり)さん
Q.山形は好きですか?
もちろん好きですよ。
自分がここで生活できていることは感謝しなきゃしいけないと思います。
もし他の場所にいたと思っても好きになっていたと思います。
大学終わった後ににオランダも行っていたんです。
最初はスイスに行きたかったんですが、
あぶれて、お前はオランダに行けと言われ泣く泣く…
でも実際行ってみたらとても楽しかったし、好きになりました。
Q.山形のどの辺が好きですか?
山形っていうより、私が住んでいる白鷹町のことなんですが、
最上川が真ん中に流れていて、西と東に分かれていて
それぞれ西と東で違う文化があって面白いんです。
私の名字は「樋口(ひぐち)」っていうんですけど
白鷹は樋口って名字すごく多いんですよ。
その名字のルーツを調べてみると
昔、京都と最上川を結んで紅花を運んでいたんです。
その時に京都からの人がずっと白鷹に住み着いて
和紙だったり、焼き物だったり、そういう活動を
始めた方が樋口だったと聞きました。
樋口って名字は京都にも多いらしく
そういう歴史を感じるところと、
平地には田んぼがあって、山の斜面を見ると
果樹園があって、頭殿山や白鷹山があって
面白いなあと思うし、色々と由縁があるところが好きですね。
Q.山形で酪農することについて考えていることはありますか?
北海道って酪農ってイメージが強いけど
東北や山形に牧場があるってあまり
知られていないですよね。
酪農は牛乳だけって思っている方が多いのかも。
人が土地を耕して、生活をしていかなければ
いけないという役割の中に
必ず動物が含まれると思うんです。
その役割を担っているのも酪農の役目は大きいんです。
手にとってすぐ食べられる
牛乳、チーズ、バターっていうもの以外の
動物の働きがあるから、人間にとってとても大事な役割も担っているんだと思います。
Q.酪農の道に入るきっかけはどういったことだったんですか?
私は後継者なので、
普通に大学を卒業して、就職してという感じではないんです。
ここに生まれた時点で、牛飼いの運命。
もちろん社会があって牛飼いがずっと継続してきたというのは
あるんですが、どこかで牛飼いは、牛飼いの血筋みたいのを
感じる時はあるんですよ。
私が高校の時に、ここ(深山ミルクえん)ができました。
それまで自宅のとなりでやっていたのは、
牛が牛舎にバアーっとつながっていて
パイプラインっていうミルカーを
移動させながら搾乳して
エサは口の前に並べてという感じでした。
住宅地の中にあるので
山で放牧してという感じではなかったです。
別にそのイメージがいやだったわけでもなかったんですが
10年前にここに来た時にびっくりしたんです。
こういう酪農の仕方があるんだって。
近代的で、牛ものびのび
フリーストールっていって
屋内に放し飼いにされてるんですが
寝たい時に寝て
食べたい時に歩いて来てエサを食べる
お乳がはってきたら
搾乳がはじまって
しぼられて、あー気持ちいいなっていうスタイル。
ストレスはできるだけないように
飼おうとしてる牛舎なのかなと思ったんです。
その時に、そういう考え方とか仕組みに対して
一種の憧れがわいてきたんだと思います。
私は3姉妹の真ん中なんですけど
姉は酪農に全然興味ないし、
妹はよくわかんないし(笑)
私は手伝っても
何だか知らないけどいやじゃかったので
進路決めなきゃなって時に
酪農学園大学っていうところが
北海道にあって
そこに行ってみたら?と言われて
うん、じゃあ行ってみる!
と一人暮らししたいっていうのも
あったので行ってみました。
Q.北海道ではどうでしたか?
酪農大学の酪農学科ってところで、
みんな酪農後継者なんですよ。
男も女も。中には牛が好きって人もいたり。
みんなそれぞれ自分の住んでいる場所から離れて、
牛飼いの仲間がいるから
独特の強いつながりがありました。
楽しい大学生活だったなー。
それが終わってからも
社会に出ると色んなところに
つながりがあると便利じゃないですか。
酪農関係、機械屋さん、エサ屋さん
組合とかって、知り合いだったていうので
うまく優遇してくれたり
絆はずっとつながってますね。
Q.酪農をやっていてここが楽しいな!ってところはどういうところですか?
乳がいっぱいでるとき!(笑)
すごく牛って敏感なんですよ。
天候、気温、風のあるなし
まぜご飯みたいなエサをつくるんですが、
それの出来映えによって
食べないとか。
水が違うと飲まない。
そういうのを駆使して
ちゃんと乳量が保ててるなあって時は
やっぱりうれしいですね。
Q.人生に影響を受けた方はいらっしゃいますか?
山川さんの牧場(蔵王マウンテンファーム・山川牧場)に何となく遊びに行った時
ソフトクリームもあるし、雰囲気がすごく良かったんです。
そこで子どもたち向けに、いのちの教育というのをされていて
どこかひっかかるところがあって
見に行っていいですか?と聞いて
見学させていただいたんですが
その授業を受けている子どもたちの顔色が、最初と最後が全然違う。
最初は血色が悪かった子も、牛とふれあうことで
顔がぽっぽと赤くなって活き活きした表情になったんです。
この力はすごいな!って思ったんです。
こういう活動やってみたら?と言われて
私も酪農教育ファームとしての活動を始めるきっかけになりました。
ミルク新聞を読んでくれている方へメッセージをお願いします。
牛がいるのは
北海道だけじゃないですよと(笑)
人が生活しているっていうのは
そこに必ず動物の力も含まれているっていうのを
知ってもらいたいですね。
あとは、何事もあきらめずに続けていって欲しいです。
毎日同じ仕事をしなきゃいけないと飽きるんですけど
その中に絶対面白みがあるんですよ。
そこにふっと気づけるともっと楽しくなると思うんですよ。
酪農の観点から言うと、
酪農は色んな役割と持っていて
食にかかわることもそう
心に働きかけることもそう
人を育てる。
何かを勇気を持って
前に踏み出してみる。
小さい子どもも最初は
牛を見ておっかないって
思って行かないところも
勇気を持ってやってみて
というと、
子牛ってベロベロなめるんだけど
1人の子が勇気を出して
なめられると、
他の子も踏み出してなめられる。
そうすると一気に楽しい雰囲気になるんです。
あそこに牛がいるけど
入ったことないなーってなったらそれまでですけど
のぞいてみようとか、
何かあるんですか?とか
牛見せてくださいとか
踏み出すことで
その人が得るものって大きいと思うんです。
だからなんぼでも声かけてほしい。
私もできるだけその声に答えたいと思っています。
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樋口さんの一日のスケジュール
5:00〜 出勤 牛のチェック
6:00〜9:30 搾乳
9:30〜 繁殖管理、牧草をあげたり、エサをつくったり、牛舎の掃除
13:00〜お昼ご飯(ごはんの時間は大事!)
16:00〜牛のベッドの掃除など
17:30〜21:00 搾乳
21:00〜24:00 晩ご飯、お風呂、テレビを見たり。
24:00 就寝
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酪農教育ファーム 深山ミルクえん
〒992-0776 山形県西置賜郡白鷹町深山2543−1
0238-85-6161
ミルク新聞 vol.1